問題文・条件
判例の趣旨に照らし、AがCに対して(Dが登場する事例ではDに対して)不動産又は動産の所有権を主張することができるか。
Aは、Bにだまされて自己所有の不動産をBに売ったが、Bの詐欺に気付き、Bに対して売買契約を取り消すとの意思表示をした。しかし、取消しまでの間に、Bが善意のCに当該不動産を売ってしまっていた。
解答:×
詐欺取消しは取消し前の善意無過失の第三者に対抗できず、その第三者に登記は要らない。
Cは取消しの意思表示より前に、詐欺の事実を知らずにBから買い受けた第三者である。
出題当時と現行法:出題当時の民法96条3項は、詐欺による取消しを「善意の第三者」に対抗できないとしていたので、善意のCには対抗できず、公式解答は✕だった。平成29年改正(令和2年4月1日施行)で「善意でかつ過失がない第三者」に改められたので、現行法では、Cに過失がないときに限りAは取消しをCに対抗できない。問題文はCの過失の有無を示していないので、現行法ではこれだけでは✕と決まらない。
根拠民法96条3項
出典:法務省 平成19年度 土地家屋調査士試験を加工して作成
Aは、Bに強迫されて自己所有の不動産をBに売ったが、強迫状態を脱し、Bに対して売買契約を取り消すとの意思表示をした。しかし、取消しまでの間にBが善意のCに当該不動産を売ってしまっていた。
解答:○
強迫による意思表示の取消しは、善意の第三者に対しても、登記がなくても対抗することができる。
3項が対抗できないとするのは「詐欺による」意思表示の取消しだけで、強迫による取消しについてこれに当たる定めはない。
根拠民法96条3項
出典:法務省 平成19年度 土地家屋調査士試験を加工して作成
Aは、自己所有の不動産の登記がBの名義になっていることを知りながら、この状態を事実上容認し、長期間放置していた。Bは当該不動産の登記がBの名義になっていることを利用して、善意のCに当該不動産を売ってしまった。
解答:×
虚偽の登記名義を承認し又は放置した者は、通謀がなくても善意の第三者に対抗できない。
AとBの通謀はないが、AはB名義の登記を知りながら事実上容認して長期間放置しており、虚偽の外観の存続を黙示に承認していたといえる。
根拠民法94条2項最判昭45.9.22
出典:法務省 平成19年度 土地家屋調査士試験を加工して作成
Aは、B所有の不動産をBから購入したがいまだ所有権の移転の登記を経由していなかった。Cは、この事情を十分に知りつつ専らAを害する目的で、当該不動産をBから購入して所有権の移転の登記を完了し、さらに、善意のDに当該不動産を転売し、Dへの所有権の移転の登記をした。
解答:×
背信的悪意者からの転得者は、自らが背信的悪意者でない限り、登記の欠缺を主張できる。
専らAを害する目的のCは背信的悪意者だが、善意で買い受けて登記を経たDは自ら背信的悪意者と評価される者ではない。
根拠民法177条最判平8.10.29
出典:法務省 平成19年度 土地家屋調査士試験を加工して作成
Aは、B所有の動産をBから買ったが、後日持ち帰ることにして、当該動産をBに保管してもらっていた。しかし、Bは、善意のCにも当該動産を売ってしまい、Cの依頼を受けてCのために当該動産を保管していた。
解答:○
動産の対抗要件である引渡しには占有改定が含まれ、先に占有改定を受けた譲受人が所有権を対抗することができる。
AはBが以後Aのために保管する形で占有改定による引渡しを受け、対抗要件を備えている。
根拠民法178条民法183条
出典:法務省 平成19年度 土地家屋調査士試験を加工して作成