はじめに(登記の見方)

表示に関する登記の全体に通る考え方をまとめた。

報告的登記と形成的登記

表示に関する登記を、すでに起きた事実を登記記録に写す登記(報告的登記)と、登記をすることで初めて登記記録上の効果が生じる登記(形成的登記)に分ける、講学上の区別。申請義務があるか、登記官が職権でできるか、権利者の承諾が要るか、という手続の違いがこの区別に対応する。

どういう区別か

土地や建物は、登記の前に現実に存在し、変わり、なくなる。

これに対し、一筆の土地を二筆にする、二筆を一筆にする、一個の建物を二個に分ける、二個を一個にする、といった操作は、現実の土地や建物が変わるのではなく、登記記録の上で「筆」や「個」の単位を組み替えるものである。

不動産登記法にこの言葉はない。条文は個々の登記ごとに「誰が」「いつまでに」申請するかを定めているだけで、それを並べると二つの型に分かれる、という説明の道具である。

手続にどう表れるか

報告的登記は、事実が先にあって登記が遅れると登記記録が現実と食い違うので、法は申請義務と期限(原則として1月以内)を課し、申請がなくても登記官が職権でできることにしている(法28条)。形成的登記は、するかしないかが所有者の自由なので、申請義務はなく、職権でできるのも例外的な場合に限られる。

もう一つの違いは、権利者の承諾である。

報告的登記形成的登記
該当する登記表題登記、変更の登記、更正の登記、滅失の登記、合体による登記等分筆・合筆の登記、建物の分割・区分・合併の登記、共用部分である旨の登記
申請義務あり。原則1月以内(法36・37・42・47・49・51・57条)なし
職権できる(法28条)原則できない。例外は法39条2項・3項の分筆・合筆
権利者の承諾要らない(合体は例外。令別表13項ト)権利の登記に影響する場面で要る(法40条、54条3項、58条3項)
申請できる者表題部所有者又は所有権の登記名義人(表題登記は所有権を取得した者)表題部所有者又は所有権の登記名義人(法39条1項・54条1項・58条2項)

境目で迷うもの

更正の登記は、もともと登記事項が誤っていたことを直すものなので報告的登記だが、変更の登記と違って申請義務はない。義務が課されているのは変更の登記であって、更正の登記に期限を定めた規定はない。

地目の変更の登記は、現地の用途の変化という事実を写すので報告的登記である。登記官が地目を認定する判断を伴うが、それは事実の認定であって、登記で用途を作り出すわけではない。

一筆の土地の一部だけが別の地目になった場合の分筆(地目変更分筆)は、形が分筆でも中身は報告的登記に近い。

合体による登記等(法49条)は、二個の建物が物理的に一個になったという事実を写すので報告的登記であり、申請義務も課されている(法49条1項)。ただし合体後の建物に権利の登記を引き継ぐため、権利の登記名義人の承諾を証する情報が要る場面があり(令別表13項ト)、承諾の要否だけを見ると形成的登記に似る。

表示に関する登記と権利に関する登記

登記記録は、不動産の物理的な状況を記録する表題部と、所有権・抵当権などの権利を記録する権利部からなる。表題部にする登記が表示に関する登記、権利部にする登記が権利に関する登記で、調査士が扱うのは前者。

二つの登記

登記記録は一筆の土地・一個の建物ごとに作られ、表題部と権利部に分かれる(法2条5号・7号・8号、法12条)。

表示に関する登記のうち、その不動産について表題部に最初にされる登記を表題登記という(法2条20号)。表題登記によって登記記録が開設され、以後の変更・更正・滅失や、分筆・合筆はすべて、この登記記録の上で行われる。

扱いの違い

表示に関する登記は、現実の状況を正しく写すことが目的なので、申請義務があり(例: 法36・47条)、登記官が職権ですることもでき(法28条)、必要なら登記官が実地に調査できる(法29条)。申請人は所有者側の一人で足り、相手方は要らない。

権利に関する登記は、当事者の権利関係を公示するもので、原則として登記権利者と登記義務者が共同で申請する(法60条)。申請義務はなく、登記官は書面の審査にとどまり実地調査の権限はない。

表題部所有者(法2条10号)は、所有権の登記がない不動産の表題部に所有者として記録された者で、権利部の所有権の登記名義人とは区別される。表題部所有者の記録は所有権を公示する権利の登記ではないが、表示に関する登記の申請人を決める基準として働く。

表示に関する登記権利に関する登記
記録される場所表題部権利部(甲区・乙区)
内容所在・地番・地目・地積、種類・構造・床面積など所有権、地上権、抵当権など法3条の権利
申請人表題部所有者・所有権の登記名義人など、所有者側の単独申請登記権利者と登記義務者の共同申請が原則(法60条)
申請義務あり(報告的登記)なし
職権あり(法28条)原則なし
登記官の調査実地調査ができる(法29条)書面審査

申請主義と職権主義

登記は当事者の申請か官公署の嘱託がなければすることができない(申請主義、法16条1項)。

原則は申請主義

法16条1項は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記は当事者の申請又は官庁若しくは公署の嘱託がなければすることができないと定める。登記官が自分の判断で登記を書き込むことは、原則としてできない。

表示に関する登記は職権でできる

法28条は「表示に関する登記は、登記官が、職権ですることができる」と定める。

職権でしようとするとき、登記官は必要があれば不動産の表示に関する事項を調査でき、日出から日没までの間に限って現地を検査し、関係者に質問することができる(法29条)。

職権でできないもの

法28条は表示に関する登記の全部を職権の対象にしているが、形成的登記は所有者の意思で単位を組み替えるものなので、条文が個別に職権を認めた場合に限られる。

権利に関する登記は申請主義が貫かれ、職権でできるのは、表示の登記に連動して法が個別に定めた場合(分筆に伴う権利の登記の転写など)にとどまる。

職権で「しなければならない」場合

「することができる」ではなく「しなければならない」と書かれた職権登記もある。

申請義務と過料

報告的登記には、事実が生じた日から1月以内に申請しなければならない義務が課され、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料に処せられる(法164条1項)。誰に、いつから、どの登記について義務があるかが問われる。

義務がある登記

土地の表題登記(法36条)、地目・地積の変更の登記(法37条)、土地の滅失の登記(法42条)、建物の表題登記(法47条1項)、建物の表題部の変更の登記(法51条1項〜4項)、建物の滅失の登記(法57条)が、期限付きの申請義務を定めた主な条文である。いずれも「1月以内」で、起算点は事実が生じた日(取得の日、変更の日、滅失の日)である。

更正の登記、分筆・合筆の登記、表題部所有者の氏名・住所の変更の登記には、申請義務を定めた規定がない。

義務を負う者

表題登記は「所有権を取得した者」が申請義務者で、まだ登記記録がないので表題部所有者という概念はない。変更・滅失の登記は「表題部所有者又は所有権の登記名義人」が義務者である。

変更があった後に所有者が交代した場合は、新しい表題部所有者又は所有権の登記名義人が、自分の登記(表題部所有者の更正の登記又は所有権の登記)があった日から1月以内に申請しなければならない(法37条2項、51条2項)。起算点が「変更の日」でなく「自分が登記名義人になった日」に動くのが、この二項の要点である。

過料

法164条1項は、これらの申請をすべき義務がある者が正当な理由なく申請を怠ったとき、10万円以下の過料に処すると定める。過料は刑罰ではなく、行政上の秩序罰である。

令和8年度時点では、所有権の登記名義人の住所等の変更の登記の義務(法76条の5)に対する過料(5万円以下、法164条2項)も置かれているが、これは権利に関する登記の側の話で、表示に関する登記の申請義務とは別の制度である。

ひっかけ・例外(規定がないこと)

根拠

不動産登記法第28条職権による表示に関する登記

1項表示に関する登記は、登記官が、職権ですることができる。

不動産登記法第39条分筆又は合筆の登記

1項分筆又は合筆の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。

2項登記官は、前項の申請がない場合であっても、一筆の土地の一部が別の地目となり、又は地番区域(地番区域でない字を含む。第四十一条第二号において同じ。)を異にするに至ったときは、職権で、その土地の分筆の登記をしなければならない。

3項登記官は、第一項の申請がない場合であっても、第十四条第一項の地図を作成するため必要があると認めるときは、第一項に規定する表題部所有者又は所有権の登記名義人の異議がないときに限り、職権で、分筆又は合筆の登記をすることができる。

不動産登記法第54条建物の分割、区分又は合併の登記

次に掲げる登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。

1項1号建物の分割の登記(表題登記がある建物の附属建物を当該表題登記がある建物の登記記録から分割して登記記録上別の一個の建物とする登記をいう。以下同じ。)

1項2号建物の区分の登記(表題登記がある建物又は附属建物の部分であって区分建物に該当するものを登記記録上区分建物とする登記をいう。以下同じ。)

1項3号建物の合併の登記(表題登記がある建物を登記記録上他の表題登記がある建物の附属建物とする登記又は表題登記がある区分建物を登記記録上これと接続する他の区分建物である表題登記がある建物若しくは附属建物に合併して一個の建物とする登記をいう。以下同じ。)

3項第四十条の規定は、所有権等の登記以外の権利に関する登記がある建物についての建物の分割の登記又は建物の区分の登記をするときについて準用する。

不動産登記法第40条分筆に伴う権利の消滅の登記

1項登記官は、所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地について分筆の登記をする場合において、当該分筆の登記の申請情報と併せて当該権利に関する登記に係る権利の登記名義人(当該権利に関する登記が抵当権の登記である場合において、抵当証券が発行されているときは、当該抵当証券の所持人又は裏書人を含む。)が当該権利を分筆後のいずれかの土地について消滅させることを承諾したことを証する情報が提供されたとき(当該権利を目的とする第三者の権利に関する登記がある場合にあっては、当該第三者が承諾したことを証する情報が併せて提供されたときに限る。)は、法務省令で定めるところにより、当該承諾に係る土地について当該権利が消滅した旨を登記しなければならない。

不動産登記法第58条共用部分である旨の登記等

2項共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記は、当該共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記をする建物の表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。

3項共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記は、当該共用部分又は団地共用部分である建物に所有権等の登記以外の権利に関する登記があるときは、当該権利に関する登記に係る権利の登記名義人(当該権利に関する登記が抵当権の登記である場合において、抵当証券が発行されているときは、当該抵当証券の所持人又は裏書人を含む。)の承諾があるとき(当該権利を目的とする第三者の権利に関する登記がある場合にあっては、当該第三者の承諾を得たときに限る。)でなければ、申請することができない。

4項登記官は、共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記をするときは、職権で、当該建物について表題部所有者の登記又は権利に関する登記を抹消しなければならない。

不動産登記法第37条地目又は地積の変更の登記の申請

1項地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。

不動産登記法第51条建物の表題部の変更の登記

1項第四十四条第一項各号(第二号及び第六号を除く。)に掲げる登記事項について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。

不動産登記法第2条定義

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

15号変更の登記 登記事項に変更があった場合に当該登記事項を変更する登記をいう。

16号更正の登記 登記事項に錯誤又は遺漏があった場合に当該登記事項を訂正する登記をいう。

20号表題登記 表示に関する登記のうち、当該不動産について表題部に最初にされる登記をいう。

不動産登記規則第35条一の申請情報によって申請することができる場合

令第四条ただし書の法務省令で定めるときは、次に掲げるときとする。

7号同一の不動産について申請する二以上の登記が、不動産の表題部の登記事項に関する変更の登記又は更正の登記及び土地の分筆の登記若しくは合筆の登記又は建物の分割の登記、建物の区分の登記若しくは建物の合併の登記であるとき。

不動産登記法第2条定義

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

2号不動産の表示 不動産についての第二十七条第一号、第三号若しくは第四号、第三十四条第一項各号、第四十三条第一項、第四十四条第一項各号又は第五十八条第一項各号に規定する登記事項をいう。

3号表示に関する登記 不動産の表示に関する登記をいう。

4号権利に関する登記 不動産についての次条各号に掲げる権利に関する登記をいう。

5号登記記録 表示に関する登記又は権利に関する登記について、一筆の土地又は一個の建物ごとに第十二条の規定により作成される電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)をいう。

7号表題部 登記記録のうち、表示に関する登記が記録される部分をいう。

8号権利部 登記記録のうち、権利に関する登記が記録される部分をいう。

10号表題部所有者 所有権の登記がない不動産の登記記録の表題部に、所有者として記録されている者をいう。

20号表題登記 表示に関する登記のうち、当該不動産について表題部に最初にされる登記をいう。

不動産登記法第29条登記官による調査

1項登記官は、表示に関する登記について第十八条の規定により申請があった場合及び前条の規定により職権で登記しようとする場合において、必要があると認めるときは、当該不動産の表示に関する事項を調査することができる。

不動産登記法第16条当事者の申請又は嘱託による登記

1項登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請又は官庁若しくは公署の嘱託がなければ、することができない。

不動産登記法第39条分筆又は合筆の登記

2項登記官は、前項の申請がない場合であっても、一筆の土地の一部が別の地目となり、又は地番区域(地番区域でない字を含む。第四十一条第二号において同じ。)を異にするに至ったときは、職権で、その土地の分筆の登記をしなければならない。

3項登記官は、第一項の申請がない場合であっても、第十四条第一項の地図を作成するため必要があると認めるときは、第一項に規定する表題部所有者又は所有権の登記名義人の異議がないときに限り、職権で、分筆又は合筆の登記をすることができる。

不動産登記法第51条建物の表題部の変更の登記

6項前項の場合において、同項に規定する登記事項に関する変更の登記がされたときは、登記官は、職権で、当該一棟の建物に属する他の区分建物について、当該登記事項に関する変更の登記をしなければならない。

不動産登記法第29条登記官による調査

1項登記官は、表示に関する登記について第十八条の規定により申請があった場合及び前条の規定により職権で登記しようとする場合において、必要があると認めるときは、当該不動産の表示に関する事項を調査することができる。

2項登記官は、前項の調査をする場合において、必要があると認めるときは、日出から日没までの間に限り、当該不動産を検査し、又は当該不動産の所有者その他の関係者に対し、文書若しくは電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの提示を求め、若しくは質問をすることができる。この場合において、登記官は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

不動産登記法第36条土地の表題登記の申請

1項新たに生じた土地又は表題登記がない土地の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。

不動産登記法第37条地目又は地積の変更の登記の申請

1項地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。

2項地目又は地積について変更があった後に表題部所有者又は所有権の登記名義人となった者は、その者に係る表題部所有者についての更正の登記又は所有権の登記があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。

不動産登記法第42条土地の滅失の登記の申請

1項土地が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から一月以内に、当該土地の滅失の登記を申請しなければならない。

不動産登記法第47条建物の表題登記の申請

1項新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。

不動産登記法第51条建物の表題部の変更の登記

1項第四十四条第一項各号(第二号及び第六号を除く。)に掲げる登記事項について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。

2項前項の登記事項について変更があった後に表題部所有者又は所有権の登記名義人となった者は、その者に係る表題部所有者についての更正の登記又は所有権の登記があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。

不動産登記法第57条建物の滅失の登記の申請

1項建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。

不動産登記法第164条過料

1項第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。

2項第七十六条の五の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、五万円以下の過料に処する。