登記官が職権でするか(職権による登記)
登記は申請又は嘱託によるのが原則(法16条)だが、表示に関する登記は登記官が職権ですることができる(法28条)。
- そのうえで個別の条文が「できる」と「しなければならない」を分けている
- できる: 地図作成のための分筆・合筆(異議がないとき)、地図等の訂正、筆界特定後の地積更正など
- しなければならない: 一部地目変更による分筆、共用部分である旨の登記に伴う表題部所有者・権利の登記の抹消、一棟の建物の変更・更正に伴う他の区分建物の変更・更正
- 承役地の分筆に伴う要役地の記録の変更も職権でされる
- 職権でできるからといって申請義務が消えるわけではない
「できる」と「しなければならない」
出題の型は三つ。職権事項なのに「申請しなければならない」「併せて申請しなければならない」と書く肢、「できる」を「しなければならない」に(またはその逆に)書き換える肢、要件(異議がないとき)を落とす肢。
| 場面 | 職権 | 条文 |
|---|---|---|
| 一筆の土地の一部が別の地目になった、又は地番区域を異にするに至った | しなければならない(申請がなくても分筆する) | 法39条2項 |
| 地図を作成するため必要な分筆・合筆 | できる(表題部所有者・登記名義人の異議がないときに限る) | 法39条3項 |
| 地図等に誤りがある | できる | 規則16条15項 |
| 筆界特定で地積の錯誤が明らかになった | できる(申請を促すのが先ではなく、職権でできる) | 規則 |
| 共用部分である旨の登記をするとき | 表題部所有者の登記・権利に関する登記を抹消しなければならない | 法58条4項 |
| 一棟の建物の表示(所在、構造、床面積、敷地権の目的である土地など)の変更・更正の登記がされた | 他の区分建物についても変更・更正の登記をしなければならない(効力が及ぶ) | 法51条5・6項、53条2項 |
| 承役地の分筆で地役権の範囲が一部になった | 要役地の登記記録の承役地に関する事項を変更する | 規則 |
| 分割で附属建物が主となり所在が変わる | 所在は職権で記録し、変更の登記の申請は要らない | 規則 |
| 換地で従前の一筆に数個の換地が定められた | 他の換地の登記記録は職権で作る。従前の土地の分筆は申請しない | 区画整理登記令 |
| 区分合併で区分建物でなくなった | 敷地権の表示は職権で処理される。抹消の変更の登記を併せて申請させる定めはない | 規則 |
| 建物の分割 | 職権ではしない(申請による) | 法54条 |
| 共用部分である旨の登記 | 職権ではしない(申請による) | 法58条2項 |
職権と申請義務
一部地目変更の分筆は職権事項だが、地目の変更の登記の申請義務は残る。
- 「職権で分筆できるから申請を要しない」は✕
- 一部地目変更分筆の申請は職権の発動を促すもので、共有者の一人からできる
登記の種類ごとに
一棟の建物の変更・更正の効力一棟の建物の変更
- 区分建物について、一棟の建物の所在・構造・床面積・敷地権の目的である土地などの変更の登記は、同じ一棟に属する他の区分建物についてされた変更の登記としての効力を有する(法51条5項)
- 更正の登記も同じ(法53条2項)
- そのとき登記官は職権で他の区分建物について変更・更正の登記をしなければならない(6項)
- 他の区分建物の所有者が申請する必要はなく、併せて申請させる定めもない
この項目の肢(8)
- H20-4-イ◯各階が1個の区分建物である3階建ての一棟の建物の3階部分にある区分建物が取り壊されたことにより一棟の建物が2階建てとなったとしても、取り壊された区分建物以外の区分建物の表題部所有者又は所有権の登記名義人は、取り壊された区分建物以外の区分建物について、構造の変更による表題部の変更の登記を申請することを要しない。→ 一棟の変更の登記は、他の区分建物にも効力が及ぶ。
- H25-16-ア◯甲区分建物の所有権の登記名義人の申請により、甲区分建物が属する一棟の建物の床面積の変更の登記がされたときは、当該一棟の建物に属する乙区分建物の所有権の登記名義人は、乙区分建物について、当該一棟の建物の床面積の変更の登記を申請することを要しない。→ 一棟の建物についての変更の登記がされれば、他の区分建物については登記官が職権で変更の登記をする。
- H29-15-オ✕甲区分建物及び乙区分建物からなる一棟の建物の床面積に変更がある場合において、甲区分建物の所有権の登記名義人が、当該一棟の建物の表題部の変更の登記を申請したときは、乙区分建物の所有権の登記名義人も、当該一棟の建物の表題部の変更の登記を申請しなければならない。→ 一棟の建物の変更の登記は、他の区分建物についてもされたことになる。
- R1-18-イ✕区分建物が属する一棟の建物の構造についての表題部の更正の登記を申請する場合には、その一棟の建物に属する他の区分建物の所有権の登記名義人も、併せて一棟の建物の表題部の更正の登記を申請しなければならない。→ 一棟の建物の更正の登記は、他の区分建物についてもされたことになる。
- R3-15-エ✕区分建物の登記記録の一棟の建物の表示に関する表題部の記録事項に誤りがあった場合には、その一棟の建物に属する区分建物の所有権の登記名義人は、他の区分建物の所有権の登記名義人に代位して、当該他の区分建物についても表題部の更正の登記の申請をすることができる。→ 一棟の表示の更正は、他の区分建物にもその効力が及ぶ。登記官が職権で直す。
- R4-17-イ✕区分建物の所有権の登記名義人Aが当該区分建物について当該区分建物が属する一棟の建物の床面積の変更の登記を申請する場合には、併せて当該一棟の建物に属する他の区分建物についての一棟の建物の床面積の変更の登記を申請しなければならない。→ 一棟の建物の床面積の変更は、他の区分建物にも効力が及ぶ。登記官が職権で直す。
- R6-18-エ✕甲区分建物と乙区分建物からなる一棟の建物のうち甲区分建物のみが滅失した場合には、甲区分建物の滅失の登記の申請は、乙区分建物の表題部の変更の登記の申請と併せてしなければならない。→ 併せて申請させる定めがない。乙の変更は登記官が職権でする。
- R6-18-オ◯甲区分建物及び乙区分建物からなる一棟の建物について、甲区分建物が増築されたことにより、甲区分建物の床面積の変更の登記と当該一棟の建物の床面積の変更の登記とが申請された場合には、乙区分建物の所有権の登記名義人は、乙区分建物について、当該一棟の建物の床面積の変更の登記を申請することを要しない。→ 一棟の床面積の変更は他の区分建物にも効力が及ぶ。申請しなくてよい。
分筆・合筆の職権分筆
- 一筆の土地の一部が別の地目になったとき、又は地番区域を異にするに至ったときは、申請がなくても登記官が職権で分筆の登記をする(法39条2項)
- 地目の変更の登記の申請義務は残るので「申請を要しない」は✕
- 一部地目変更分筆の申請は職権を促すもので、共有者の一人からできる
- 地図を作成するため必要があるときは、表題部所有者・所有権の登記名義人の異議がないときに限り、職権で分筆・合筆の登記をすることができる(3項)
- 「異議がないとき」を落とした肢は✕
- 承役地の分筆で地役権の範囲が分筆後の一部になるときは、要役地の登記記録の承役地に関する事項は職権で変更される
- 換地で従前の一筆に数個の換地が定められた場合、他の換地の登記記録は登記官が職権で作り、従前の土地の分筆を申請する必要はない
この項目の肢(7)
- H17-11-エ✕換地計画において、従前1個の土地に対し数個の換地が定められた場合は、土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人は、従前の土地につき分筆の登記の申請をしなければならない。→ 従前1個の土地に数個の換地が定められた場合、他の各換地の登記記録は登記官が職権で作成するのであって、従前の土地について分筆の登記を申請する必要はない。
- H22-18-ウ◯甲土地を要役地とする地役権設定登記がされている乙土地を分筆する場合において、分筆後の土地の一部について地役権が存続するときは、甲土地の登記記録に記録されている承役地である不動産に関する事項については、職権で変更の登記がされる。→ 承役地を分筆して地役権の範囲が変わるときは、要役地の登記記録が職権で変更される。
- H23-6-ウ✕土地の一部が別の地目となった場合には、登記官が職権で分筆することができるので、所有権の登記名義人は、分筆の登記を申請することを要しない。→ 職権による分筆は申請がない場合の補充であり、地目に関する変更の登記の申請義務は残る。
- H25-9-エ◯登記官は、地図を作成するため必要があると認める場合において、甲土地の所有権の登記名義人の異議がないときは、職権で、甲土地の分筆の登記をすることができる。→ 地図を作成するため必要があり、異議がないときは、登記官が職権で分筆の登記をすることができる。
- H29-14-オ✕地図を作成するために必要があると認めるときは、甲土地と乙土地の所有権の登記名義人であるAに異議があるときであっても、登記官は、職権で、本件合筆の登記をすることができる。→ 職権の合筆は、名義人に異議がないときに限る。
- R2-9-ア✕登記官は、地図を作成するため必要があると認めるときは、所有権の登記名義人の異議の有無にかかわらず、職権で、分筆の登記をすることができる。→ 地図作成のための職権分筆は、異議がないときに限る。
- R4-8-オ◯土地の所有権の登記名義人がA及びBであり、Aが死亡してその相続人がC及びDである場合において、当該土地の一部が別地目となったときは、Dは、単独で、当該土地の一部地目変更分筆登記を申請することができる。→ 一部地目変更分筆は登記官の職権事項。申請は職権を促すもので、一人からできる。
共用部分である旨の登記共用部分
- 共用部分である旨の登記は申請による(法58条2項)
- 職権ではできない
- 登記官は共用部分である旨の登記をするときは、職権でその建物の表題部所有者の登記又は権利に関する登記を抹消しなければならない(4項)
- 抹消されるのは表題部所有者と権利の登記で、種類などの表示は残る
- 共用部分である旨の登記は申請による
- 表示に関する登記は法28条で職権にできるが、個別の定めがあるものだけが実際の職権事項
この項目の肢(5)
- H17-19-エ◯共用部分である旨の登記がされる場合には、建物の表題部所有者の登記又は所有権その他の権利に関する登記は、職権で抹消される。→ 登記官は、共用部分である旨の登記をするときは、職権で表題部所有者の登記又は権利に関する登記を抹消しなければならない。
- H30-16-ア◯共用部分である旨の登記がされる場合には、当該建物の表題部所有者の登記又は権利に関する登記が抹消される。→ 共用部分である旨の登記をすると、表題部所有者や権利の登記は職権で抹消される。
- H30-16-イ✕規約による共用部分である旨の登記は、登記官が職権ですることができる。→ 共用部分である旨の登記は申請による。職権ではできない。
- R5-17-イ◯所有権の登記がない建物について共用部分である旨の登記がされる場合には、当該建物の表題部所有者に関する登記事項を抹消する記号が記録される。→ 表題部所有者の登記は、職権で抹消される。
- R7-12-イ✕登記官は、表題登記のある建物について共用部分である旨の登記をするときは、当該建物の種類に関する登記事項を抹消する記号を記録しなければならない。→ 抹消されるのは表題部所有者の登記と権利に関する登記。種類は残る。
地図等の職権訂正地図訂正・図面訂正
- 登記官は地図等に誤りがあると認めるときは、職権で訂正することができる(規則16条15項)
- 申出がなくてもよい
この項目の肢(3)
- H23-5-エ✕登記官は、地図に誤りがあると認められる場合であっても、地図訂正の申出がないときは、職権で地図訂正をすることはできない。→ 登記官は、地図等に誤りがあると認めるときは、職権で訂正することができる。
- H30-6-オ✕登記官は、地図に表示された土地の区画に誤りがあると認める場合であっても、その訂正の申出がない限り、訂正をすることはできない。→ 登記官は、職権で地図等を訂正することができる。
- R7-4-イ◯地図に表示された土地の区画に誤りがある場合には、登記官は、当該土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人からの地図訂正の申出がなくても、職権でその訂正をすることができる。→ 登記官は職権で地図等を訂正できる。
建物の分割建物の分割・区分
- 建物の分割の登記を職権でする仕組みはない(主と附属の間に道路ができても申請による)
- 分割で附属建物が主となる建物になり所在地番が変わるときは、所在は登記官が職権で記録する
- 表題部の変更の登記を併せて申請する必要はない
- 主である建物と附属建物の間に道路ができても、分割の登記は申請による
- 職権ではできない
区分合併区分建物の分割・区分・合併
- 区分合併で区分建物でない建物になったときは、敷地権の表示は登記官が職権で処理する
- 敷地権の表示を抹消する変更の登記を併せて申請させる定めはない
この項目の肢(1)
- H29-17-エ✕所有権が敷地権として登記されているいずれも主である甲区分建物及び乙区分建物を区分合併して、これらの区分建物が属する一棟の建物が区分建物ではない建物になった場合におけるこれらの区分建物の区分合併の登記の申請は、敷地権の表示を抹消するための区分建物の表題部の変更の登記の申請と併せてしなければならない。→ 区分合併で区分建物でなくなれば、敷地権の表示は職権で処理される。
地目の変更
- 一部地目変更で職権分筆がされても、地目の変更の登記の申請義務は残る
この項目の肢(1)
- H23-6-ウ✕土地の一部が別の地目となった場合には、登記官が職権で分筆することができるので、所有権の登記名義人は、分筆の登記を申請することを要しない。→ 職権による分筆は申請がない場合の補充であり、地目に関する変更の登記の申請義務は残る。
要役地の記録の職権変更地役権
- 承役地を分筆して地役権の範囲が分筆後の一部になったときは、要役地の登記記録の承役地に関する事項は登記官が職権で変更する
- 要役地の側で申請は要らない
この項目の肢(1)
- H22-18-ウ◯甲土地を要役地とする地役権設定登記がされている乙土地を分筆する場合において、分筆後の土地の一部について地役権が存続するときは、甲土地の登記記録に記録されている承役地である不動産に関する事項については、職権で変更の登記がされる。→ 承役地を分筆して地役権の範囲が変わるときは、要役地の登記記録が職権で変更される。
筆界特定後の地積更正地積の変更・更正
- 一筆の全部の筆界について筆界特定がされ、地積に錯誤があると認められるときは、登記官は職権で地積の更正の登記をすることができる
- 「しなければならない」ではない
この項目の肢(1)
- R2-8-ウ✕一筆の土地に係る全ての筆界について筆界特定がされた場合において、筆界特定手続記録により、当該土地の登記記録の地積に錯誤があると認められるときは、当該土地の管轄登記所の登記官は、当該土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人に対して地積に関する更正の登記の申請を促すことなく、職権で地積に関する更正の登記をしなければならない。→ 職権は「することができる」。しなければならない、ではない。
区分建物の一部の滅失建物の滅失
- 一棟の一部の区分建物が滅失したときの他の区分建物の変更は職権でされ、併せて申請させる定めはない
この項目の肢(1)
- R6-18-エ✕甲区分建物と乙区分建物からなる一棟の建物のうち甲区分建物のみが滅失した場合には、甲区分建物の滅失の登記の申請は、乙区分建物の表題部の変更の登記の申請と併せてしなければならない。→ 併せて申請させる定めがない。乙の変更は登記官が職権でする。
根拠
不動産登記法第16条当事者の申請又は嘱託による登記
1項登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請又は官庁若しくは公署の嘱託がなければ、することができない。
2項第二条第十四号、第五条、第六条第三項、第十条及びこの章(この条、第二十七条、第二十八条、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第四十一条、第四十三条から第四十六条まで、第五十一条第五項及び第六項、第五十三条第二項、第五十六条、第五十八条第一項及び第四項、第五十九条第一号、第三号から第六号まで及び第八号、第六十六条、第六十七条、第七十一条、第七十三条第一項第二号から第四号まで、第二項及び第三項、第七十六条から第七十六条の四まで、第七十六条の六、第七十八条から第八十六条まで、第八十八条、第九十条から第九十二条まで、第九十四条、第九十五条第一項、第九十六条、第九十七条、第九十八条第二項、第百一条、第百二条、第百六条、第百八条、第百十二条、第百十四条から第百十七条まで並びに第百十八条第二項、第五項及び第六項を除く。)の規定は、官庁又は公署の嘱託による登記の手続について準用する。
不動産登記法第28条職権による表示に関する登記
1項表示に関する登記は、登記官が、職権ですることができる。
不動産登記法第39条分筆又は合筆の登記
2項登記官は、前項の申請がない場合であっても、一筆の土地の一部が別の地目となり、又は地番区域(地番区域でない字を含む。第四十一条第二号において同じ。)を異にするに至ったときは、職権で、その土地の分筆の登記をしなければならない。
3項登記官は、第一項の申請がない場合であっても、第十四条第一項の地図を作成するため必要があると認めるときは、第一項に規定する表題部所有者又は所有権の登記名義人の異議がないときに限り、職権で、分筆又は合筆の登記をすることができる。
不動産登記法第51条建物の表題部の変更の登記
5項建物が区分建物である場合において、第四十四条第一項第一号(区分建物である建物に係るものに限る。)又は第七号から第九号までに掲げる登記事項(同号に掲げる登記事項にあっては、法務省令で定めるものに限る。次項及び第五十三条第二項において同じ。)に関する変更の登記は、当該登記に係る区分建物と同じ一棟の建物に属する他の区分建物についてされた変更の登記としての効力を有する。
6項前項の場合において、同項に規定する登記事項に関する変更の登記がされたときは、登記官は、職権で、当該一棟の建物に属する他の区分建物について、当該登記事項に関する変更の登記をしなければならない。
不動産登記法第53条建物の表題部の更正の登記
2項第五十一条第五項及び第六項の規定は、建物が区分建物である場合における同条第五項に規定する登記事項に関する表題部の更正の登記について準用する。
不動産登記法第58条共用部分である旨の登記等
4項登記官は、共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記をするときは、職権で、当該建物について表題部所有者の登記又は権利に関する登記を抹消しなければならない。
不動産登記規則第16条地図等の訂正
15項登記官は、地図等に誤りがあると認めるときは、職権で、その訂正をすることができる。